ウイスキーの飲み方 - トワイスアップ(Twice Up)
(トゥワイスアップ)
トワイスアップ(トゥワイスアップ)とは、ウイスキーと常温の水を1対1の割合で混ぜる飲み方で、特にテイスティングの場などで広く用いられているスタイルです。ウイスキーに少量の水を加えるだけでなく、等量の水を加えることでアルコールの刺激を和らげつつ、香りと味わいのバランスを引き出すという意図があります。
この飲み方の最大の特徴は、ウイスキー本来の個性を損なうことなく、むしろその「内側」にある繊細な香味を引き出しやすくなるという点です。アルコール度数が高いままのストレートでは感じ取りにくかった果実のような甘みや、熟成によって生まれた複雑な香りが、水を加えることでふわりと開くことがあります。まるで硬く閉じていたつぼみがゆっくりと花開くかのように、隠れていたニュアンスが現れるのです。
トワイスアップに使用する水は、できるだけクセのない軟水が望ましく、冷やさず常温で使うのが基本とされています。冷たい水を使ってしまうと、香りが開きにくいため、本来の狙いが損なわれてしまいます。また、グラスも香りが立ちやすい形状のものが適しており、テイスティンググラスなどがあれば理想的です。
トワイスアップは、特にシングルモルトウイスキーや、香りを重視して造られた銘柄に向いています。蒸留所やボメーカーのテイスティングノートでは、「加水時にこういう香りが立つ」といった表現がされることも多く、その再現を自宅で試すにはトワイスアップがぴったりの手法です。香りを丁寧に感じ取りたいときや、アルコールの刺激が強すぎると感じるときには、この飲み方が非常に効果的です。
一方で、加水によって風味がやや軽く感じられることもあるため、ウイスキーの濃厚な飲みごたえを楽しみたい方には物足りなく感じる場合もあります。
トワイスアップは、「ウイスキーの奥行き」を探るための入り口のような存在です。単なる飲み方のひとつではなく、香り、味、余韻、そのすべてをじっくりと観察し、感じ取るための手法として、初心者から愛好家まで幅広く親しまれています。穏やかな口当たりの中に、ウイスキーが本来持っている深い魅力を発見する――そんな時間を約束してくれる飲み方が、トワイスアップなのです。
