
「ボルドー・プリムール」とは?
プリムールとは、樽で熟成中のワインを一部先行販売するという、ボルドー独自のシステムです。
「プリムール」として売り出されるワインは、長期熟成が見込める高級ワインがほとんどです。
年月を経ると、その市場価値は上昇する傾向にあり、ヨーロッパでは富裕層の投資商品として知られています。
「プリムール」は"シャトー"ものが中心
ブドウ栽培から醸造・瓶詰めまでを行うボルドーの生産者・シャトー。
世界屈指の高級ワインに分類されるシャトーのワインは、長期熟成を経て味わいが深く、年月を経ると市場価格が上昇する傾向にあります。
これらの高級ワインが「プリムール」として販売されます。
プリムール・ウィーク
毎年4月初旬「プリムール・ウィーク」と呼ばれるその期間中に、世界中のワインの評論家やバイヤーがボルドーに集結し、試飲を行います。(2019年、2020年については、コロナのために「遠隔地」で実施。)
その試飲を通して、ワイン評論家やバイヤーはワインの出来栄えを判断し、買い付け数などを決めていきます。
さらに、各シャトーはワイン評論家の評価や、世界の経済情勢を加味しながら、値決めを考え始めます。
「プリムール」はワイン市場全体に影響を及ぼす大切な要素の1つと言えます。
ボルドー・2022ヴィンテージの特徴
2022年ヴィンテージは「三部作」と呼ばれる2018、2019、2020ヴィンテージにも匹敵する有望なヴィンテージと評価されています。
著名なワイン作家ジェーン・アンソン氏は、「高温で降水量の少ない気候のため、小粒で皮が厚く、凝縮感があるブドウが収穫できた」と語っています。
これは、生産されるワインがタンニンを多く含んでいることも意味しています。
タンニンにはワインの熟成時に酸化を防ぐ効果があり長期の熟成に向いたワインになると期待されています。
ジェーン・アンソン氏はテイスティングで、「豊かな色でタンニンの重厚感があるワイン」と表現しています。
また特殊な気候により、ワインの味わいは区画などで多様になる可能性がありますが、収穫量が少ないため、希少価値が高まり、高級なヴィンテージとして評価されることが予想されています。
2022年のボルドーの気候と収量
1暑くて乾燥した成長期
2022年のボルドーは開花の5月から収穫の9月まで大変暖かい気候が続きました。20週間のなかで半分以上の72日は28度を超え、8月には35度を超える地域もありました。
しかしありがたいことに夜は比較的涼しくなる日も多く、美味しいぶどう造りにかかせない寒暖差を十分に得ることができました。5月から9月までの約140日のうち117日は晴天で、太陽に恵まれる年となりました。
通常ボルドーでは許可されていない灌漑が特例で許可されるなど、干ばつによりぶどうに大きな影響が出ることが心配されましたが、ぶどうの生育には好都合で、湿気によって引き起こされるぶどうの病気「ベト病」を防ぐことに繋がりました。
26月の嵐
6月の雨の多くは中旬当たりの異常な気温上昇に続く嵐によるものでアキテーヌ地域のさまざまな場所で40℃以上の記録的な気温が何度も記録されました。いくつかの地域では雹の嵐に見舞われ、多くのぶどう畑に甚大な被害をもたらす危険性がありました。
しかし、嵐の中でもなんとかぶどうの木が持ちこたえてくれ、嵐の大雨が干ばつの中の恵みの雨となりました。
32022年の収量
2022年のワイン総生産量は4億1,000万リットルで、10年間の平均4億8,700万リットルと比較すると15%以上減少しました。
ただし、生産量がわずか3億7,700万リットルだった2021年に比べると改善を示しています。
2022年のボルドーの降水量と気温

2009年~2022年の気温の比較

ワインの製造工程とプリムールの販売時期
2022年ヴィンテージのボルドーワインの場合、2022年の秋に収穫したブドウは、各シャトーで圧搾・発酵・熟成を経たあとに木樽に入れてさらに約1年間熟成されます。
収穫したワインが市場に出るのは、収穫の約3年後の2025年春~夏頃。プリムールはその通常販売の時期に先駆けて、木樽で熟成させている途中で売り出されているものです。
高価なボルドーワインは、長期熟成を経て味わい深く、年月が経つとその市場価格は上昇する傾向にあります。
プリムールでボルドーワインを買うということは、一番早く、安い段階で価値のあるワインを購入できるということ。そのワインはどんどん価値を高めていくでしょう。
まだ市場に商品として売り出されていないワインを買うという、新しい経験をしてみませんか?

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ヨーロッパで伝統的な「ワイン投資」とは?
ご存知のとおり投資には、株式や債券などの伝統的資産を対象とした投資と、不動産やオプション取引のような伝統的資産以外を対象としたオルタナティブ投資があります。
オルタナティブ投資の中でも商品先物市場で取引されている金やプラチナ、穀物など、商品に投資するコモディティ投資があり、ワインもそのうちのひとつに含まれます。
日本ではあまりなじみがありませんが、株式や債券のように金融市場の影響を受けることがなく、一般的な金融資産とは異なる値動きをするため、分散投資、いわばリスクヘッジに有効な方法として、ヨーロッパの伝統的な投資のひとつとなっています。

※本記事はワインの投資目的による購買を推奨する意図はございません。
世界の約4分の1の富裕層がワインコレクター
2018年、サザビーズのオークションで、1945年ヴィンテージのロマネコンティが1本558,000ドルで落札。
グラス1杯で1,000万円相当の価格です。また、その年ジュネーヴのオークションでは、故アンリ・ジャイエ氏のワインが総額3,000万ユーロ(40億円相当)で落札されました。
このように近年、一部のワインは価値の推移のポジティブな側面が注目されており、世界の富裕層の熱い視線がボルドープリムールに注がれているというのも頷けます。
アメリカのワイン経済ジャーナル「American Association of Wine Economists」によると、「世界の4分の1の富裕層がワインコレクターであり、資産の2%をワインで保有していると推測される」としています。(※3)
(※2)(※3)出所:「金融市場とパッション投資〜ワインのケース〜」三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券株式会社作成
ワイン投資は楽しみながら
ワインは株のように流動的に価格が変動するということはないため、短期的な利益を見込めるわけではありません。
特に投資の対象となるようなファインワインには「飲み頃」が存在し、その見極めは難しくもあります。ですので、ワイン投資は、先に述べたように、資産の分散や長期投資として考えるのが良いでしょう。グレートヴィンテージのもの、生産量が少なく希少性のあるものは、需要が高まり値上がりも期待できます。
しかしそれよりも「ワインの飲み頃を待つ」、それが最大の魅力。ご自身で購入したとっておきのヴィンテージワインとして、好きな時に飲めるのが、何よりもの楽しみです。ワインは生き物ですから、ぜひここぞ!というタイミングまで熟成を待ちましょう。カドがとれ、まろやかに、そして複雑で繊細に変化したワインをじっくりと楽しみたいものですね。
