「ボルドー・プリムール」とは?
プリムールとは、樽で熟成中のワインを一部先行販売するという、ボルドー独自のシステムです。
「プリムール」として売り出されるワインは、長期熟成が見込める高級ワインがほとんどです。
年月を経ると、その市場価値は上昇する傾向にあり、ヨーロッパでは富裕層の投資商品として知られています。
「プリムール」は"シャトー"ものが中心
ブドウ栽培から醸造・瓶詰めまでを行うボルドーの生産者・シャトー。
世界屈指の高級ワインに分類されるシャトーのワインは、長期熟成を経て味わいが深く、年月を経ると市場価格が上昇する傾向にあります。
これらの高級ワインが「プリムール」として販売されます。
プリムール・ウィーク
毎年4月初旬「プリムール・ウィーク」と呼ばれるその期間中に、世界中のワインの評論家やバイヤーがボルドーに集結し、試飲を行います。(2019年、2020年については、コロナのために「遠隔地」で実施。)
その試飲を通して、ワイン評論家やバイヤーはワインの出来栄えを判断し、買い付け数などを決めていきます。
さらに、各シャトーはワイン評論家の評価や、世界の経済情勢を加味しながら、値決めを考え始めます。
「プリムール」はワイン市場全体に影響を及ぼす大切な要素の1つと言えます。
ボルドー・2023ヴィンテージの特徴
2023年ヴィンテージの品質は地域によってばらつきがあるものの、評論家らは2023年のボルドーワインは全体的に中程度の年だったと評価しています。
前半の多雨とうどんこ病の蔓延、後半の異常気象による熱波の影響による果実への被害など、厳しい状況にありましたが難しく繊細な年だったからこそ、土壌やブドウの品種、そこに働く人間のテロワールがワインに表れているヴィンテージと言えるでしょう。
著名なワイン作家ジェーン・アンソン氏は、「2021年と2022年は対照的でした。2021年は概ね涼しく雨が多く、アルコール度数が低く、若干希釈されていましたが、2022年は凝縮感、深み、時には極端な風味を伴うヴィンテージでした。2023年はその中間のどこかになると予想されます。」 と語っています。
また、ボルドーのブドウ栽培者であり銘醸家、銘作家のギャビン・クイニー氏によると、ブドウのカビ病である、うどんこ病を回避できた農園では高品質なワインが生まれるだろうとのことでした。
2023年のボルドーの天候と収量
1例年よりも暖かく、湿った天候
3月から9月にかけて降雨量は平均的で、全体的に非常に暖かい日が続きました。とても乾燥した2022年とは対照的です。
また、6月下旬の嵐の後、夏は順調で9月に収穫を終えたブドウ園が多かったため10月後半の雨はヴィンテージ評価にはほとんど影響しませんでした。
2うどんこ病の蔓延
ボルドーはブドウ畑への灌漑が許可されていないため、シーズン中の適切な時期に一定量の雨が降ることは大切な条件になっています。
ただし、降水量が多く、暖かい気候ではうどんこ病の発生リスクが上がるため、ブドウ栽培者は対策を行わなければなりません。
2023年はうどんこ病の発生リスクが高かった年でした。
過去の教訓を活かし予防ができていたアペラシオンでの収穫量は多く、うどんこ病を回避できたか否かが大きな分かれ道となりました。
32023年の収量
2023年は、ボルドーワインの収穫量が全体で3億8,400万リットル、1ヘクタール当たり37ヘクトリットルと、3年連続で少収穫となっています。
しかしながらジロンド川河口左岸のサンジュリアン、サンテステフ、ポイヤック、マルゴー、右岸のポムロールなど、名高いアペラシオンではかなり豊富な収穫量が見られました。
近年の霜害や干ばつ、猛暑、さらにはブドウ園の経済的困難が重なり、今日の生産量の減少につながっています。
▲2023VTと過去30年のVTとの比較
基準値と比較した各年のボルドーにおける5月~9月の降水量と気温
▲2006年から2023年までのボルドーのワイン生産量推移
ワインの製造工程とプリムールの販売時期
2023年ヴィンテージのボルドーワインの場合、2023年の秋に収穫したブドウは、各シャトーで圧搾・発酵・熟成を経たあとに木樽に入れてさらに約1年間熟成されます。
収穫したワインが市場に出るのは、収穫の約3年後の2026年春~夏頃。
プリムールはその通常販売の時期に先駆けて、木樽で熟成させている途中で売り出されているものです。
高価なボルドーワインは、長期熟成を経て味わい深く、年月が経つとその市場価格は上昇する傾向にあります。
プリムールでボルドーワインを買うということは、一番早く、安い段階で価値のあるワインを購入できるということ。そのワインはどんどん価値を高めていくでしょう。
まだ市場に商品として売り出されていないワインを買うという、新しい経験をしてみませんか?
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ヨーロッパで伝統的な「ワイン投資」とは?
ご存知のとおり投資には、株式や債券などの伝統的資産を対象とした投資と、不動産やオプション取引のような伝統的資産以外を対象としたオルタナティブ投資があります。
オルタナティブ投資の中でも商品先物市場で取引されている金やプラチナ、穀物など、商品に投資するコモディティ投資があり、ワインもそのうちのひとつに含まれます。
日本ではあまりなじみがありませんが、株式や債券のように金融市場の影響を受けることがなく、一般的な金融資産とは異なる値動きをするため、分散投資、いわばリスクヘッジに有効な方法として、ヨーロッパの伝統的な投資のひとつとなっています。
※本記事はワインの投資目的による購買を推奨する意図はございません。
世界の約4分の1の富裕層がワインコレクター
2018年、サザビーズのオークションで、1945年ヴィンテージのロマネコンティが1本558,000ドルで落札。
グラス1杯で1,000万円相当の価格です。また、その年ジュネーヴのオークションでは、故アンリ・ジャイエ氏のワインが総額3,000万ユーロ(40億円相当)で落札されました。
このように近年、一部のワインは価値の推移のポジティブな側面が注目されており、世界の富裕層の熱い視線がボルドープリムールに注がれているというのも頷けます。
アメリカのワイン経済ジャーナル「American Association of Wine Economists」によると、「世界の4分の1の富裕層がワインコレクターであり、資産の2%をワインで保有していると推測される」としています。(※3)
(※2)(※3)出所:「金融市場とパッション投資〜ワインのケース〜」三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券株式会社作成
ワイン投資は楽しみながら
ワインは株のように流動的に価格が変動するということはないため、短期的な利益を見込めるわけではありません。
特に投資の対象となるようなファインワインには「飲み頃」が存在し、その見極めは難しくもあります。ですので、ワイン投資は、先に述べたように、資産の分散や長期投資として考えるのが良いでしょう。グレートヴィンテージのもの、生産量が少なく希少性のあるものは、需要が高まり値上がりも期待できます。
しかしそれよりも「ワインの飲み頃を待つ」、それが最大の魅力。ご自身で購入したとっておきのヴィンテージワインとして、好きな時に飲めるのが、何よりもの楽しみです。ワインは生き物ですから、ぜひここぞ!というタイミングまで熟成を待ちましょう。カドがとれ、まろやかに、そして複雑で繊細に変化したワインをじっくりと楽しみたいものですね。